数学Ⅲ

複素数とはなにか 新しい数、二乗して負になる虚数の導入

本記事では、新しい数、虚数を導入して複素数について考える。
虚数とは二乗して負になる数である。
今までは、二次方程式で二乗して負になる解は存在しないと考えてきた。
だが、それは実数の中での話である。
解の範囲を虚数にまで広げると、二乗して負になる解も求めることができる。

この虚数と実数を合わせた数のことを複素数と呼ぶ。
一見すると、複素数のような数は存在しないように思えるが、実際に物理学などで複素数を考える場面は多い。
何より、複素数を導入することで数学の世界が広がる。
計算自体は難しくないので、落ち着いて複素数を考えてみよう。

新しい数、虚数の導入

複素数の前に、まず虚数について考える。

従来の数は以下の不等式を常に満たしていた。
\begin{eqnarray}
a^2\geqq0\\
\end{eqnarray}
この不等式を満たす数のことを実数と呼ぶ。

だが、この不等式を満たさない数が存在する。
つまり、以下の不等式を満たす。
\begin{eqnarray}
b^2\leqq0
\end{eqnarray}
この不等式を満たす数のことを虚数と呼ぶ。
虚数は以下のように表す。
\begin{eqnarray}
b=ib’\\
\\
b’:実数\\
i:虚数単位
\end{eqnarray}
ここで虚数単位\(i\)の特徴は以下の等式を満たすことである。
\begin{eqnarray}
i^2=-1
\end{eqnarray}
この虚数単位\(i\)を導入することで、今までは考えなかった二乗して負になる数虚数を考えることができる。

複素数について

複素数は実数と虚数の和で表すことができる数である。
\begin{eqnarray}
z=a+ib\\
\\
z:複素数\\
a,b:実数\\
i:虚数単位
\end{eqnarray}
ここで、実数部分の実数\(a\)を実部、虚数部分の実数\(b\)を虚部と呼ぶ。
本章ではこの複素数について考えていく。

四則演算

まず、複素数の四則演算について考える。
以下の2つの複素数\(z_1,z_2\)を用いて説明する。
\begin{eqnarray}
z_1&=&a_1+ ib_1\\
\\
z_2&=&a_2+ ib_2
\end{eqnarray}

足し算、引き算

\begin{eqnarray}
z_1\pm z_2=\left(a_1+a_2\right)+i\left(b_1+b_2\right)
\end{eqnarray}

掛け算

\begin{eqnarray}
z_1z_2&=&\left(a_1+ib_1\right)\left(a_2+ib_2\right)\\
\\
&=&a_1a_2+ia_1b_2+ib_1a_2+i^2b_1b_2\\
\\
&=&a_1a_2-b_1b_2+i\left(a_1b_2+b_1a_2\right)
\end{eqnarray}

割り算

\begin{eqnarray}
\frac{z_1}{z_2}&=&\frac{a_1+ib_1}{a_2+ib_2}\cdot\frac{a_2-ib_2}{a_2-ib_2}\\
\\
&=&\frac{a_1a_2-ia_2b_2+ib_1a_2-i^2b_1b_2}{a_2^2-i^2b_2^2}\\
\\
&=&\frac{a_1a_2+b_1b_2}{a_2^2+b_2^2}+i\frac{b_1a_2-a_1b_2}{a_2^2+b_2^2}
\end{eqnarray}

複素数平面

複素数は図1のようにグラフにして表すことができる。
(図の挿入)
横軸を実数を表す実軸、縦軸を虚数を表す虚軸にしている。
この時、原点から複素数\(z\)までの距離を\(|z|\)とした時、\(|z|\)は以下のように求めることができる。
\begin{eqnarray}
|z|=\sqrt{a^2+b^2}
\end{eqnarray}
これは、ベクトル\(\left(x,y\right)\)の長さが\(\sqrt{x^2+y^2}\)で表せることと似ていることが分かる。

また、複素数の虚数部分の符号を変えた複素数を共役と呼び、\(\overline{z}\)と書く。
\begin{eqnarray}
z=a+ib
\end{eqnarray}
ならば、
\begin{eqnarray}
\overline{z}=a-ib
\end{eqnarray}

極座標表示

最後に複素数の極座標表示について考える。
複素数\(z=a+ib\)をグラフにすると図2の点で表せる。
ここで、原点と点\(z\)を結んだ線の長さを\(r=|z|\)とし、実軸とその線のなす角度を\(\theta\)とする。
この時、実部\(a\)と虚部\(b\)はそれぞれ以下のように表せる。
\begin{eqnarray}
a&=&|z|\cos\theta\\
&=&r\cos\theta\\
\\
b&=&|z|\sin\theta\\
&=&r\sin\theta
\end{eqnarray}
よって、複素数\(z\)を極座標表示すると以下のようにかける。
\begin{eqnarray}
z=r\left(\cos\theta+i\sin\theta\right)
\end{eqnarray}
ここで、\(\cos\theta+i\sin\theta\)はオイラーの公式を使って\(e^{i\theta}\)と表すことができる。

オイラーの公式
\begin{eqnarray}
e^{\pm i\theta}=\cos\theta\pm i\sin\theta
\end{eqnarray}

よって、複素数\(z\)は極座標表示で表すと以下のようになる。
\begin{eqnarray}
z=re^{i\theta}
\end{eqnarray}
このように、複素数を極座標表示にすると、三角関数や指数関数の形に変えて表すことができる。

まとめ

本記事では複素数について説明した。
その内容を以下にまとめる。

  • 二乗して負になる数虚数を導入した。
    \begin{eqnarray}
    i^2&=&-1\\
    i&:&虚数単位
    \end{eqnarray}
  • 横軸を実軸、縦軸を虚軸として複素数はグラフにして表すことができる。
  • 複素数を極座標表示すると三角関数や指数関数で表すことができる。

虚数は一見意味のない数に感じられるかもしれない。
だが、物理学を深く学んでいくと虚数が物理学的な意味を持ったりする。
現代の物理学を説明するために、虚数、複素数は必要不可欠なのである。

演習問題

問1

以下の2つの複素数がある。
\begin{eqnarray}
z_1&=&\sqrt{3}-i\\
\\
z_2&=&2\sqrt{3}+2i
\end{eqnarray}
この2つの複素数をグラフに表した時、2つの複素数が表す点\(z_1,z_2\)を結ぶ線の長さを求めよ。

2つの複素数\(z_1,z_2\)を表すと図2のようになる。
2つの点\(z_1,z_2\)の間の長さを求めるには、複素数\(z_1\)を原点に合わせるように\(z_1,z_2\)を平行移動させる。
\(z_2\)を平行移動させた新しい複素数\(z_2’\)は以下になる。
\begin{eqnarray}
z_2’=z_2-z_1
\end{eqnarray}
ここで\(|z_2’|=|z_2-z_1|\)であることが分かるので、これを計算すれば良い。
\begin{eqnarray}
|z_2-z_1|&=&|\sqrt{3}+3i|\\
\\
&=&\sqrt{\sqrt{3}^2+3^2}\\
\\
&=&2\sqrt{3}
\end{eqnarray}

解答はこちら