本ブログではたまにオイラーの公式を用いて説明していることがある。
オイラーの公式は三角関数を指数関数で表す公式である。
だが、オイラーの公式は高校数学の範囲からは外れている。
それでも、オイラーの公式を知っておくことで、数学に対して異なる視点を持つことができるので知っておくと良いだろう。
本記事では、最初にテイラー展開という関数の展開について説明する。
その後、テイラー展開を用いてオイラーの公式を求めていく。
テイラー展開
テイラー展開とは任意の関数の近似法である。
一般的に関数\(f(x)\)はべき乗多項式に展開することができる。
\begin{eqnarray}
f(x)&=&a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3+a_4x^4+\cdots\\
\\
&=&\sum_{n=0}^\infty a_nx^{n}\\
\\
a_n:係数
\end{eqnarray}
ここで、変数\(x\)を任意の定数\(a\)だけずらして\(x-a\)を変数としても問題ない。
新しい変数\(x’=x-a\)とすればよいだけだからである。
この新しい変数\(x-a\)を用いると以下になる。
\begin{eqnarray}
f(x)=\sum_{n=0}^n a_0\left(x-a\right)^n
\end{eqnarray}
次に係数\(a_n\)を求める。
まず、\(f(x=a)\)を考えると、
\begin{eqnarray}
f(x=a)&=&a_0+a_1\left(x-a\right)|_{x=a}+a_2\left(x-a\right)^2|_{x=a}+a_3\left(x-a\right)^3|_{x=a}+\cdots\\
\\
&=&a_0
\end{eqnarray}
となる。
よって、\(a_0=f(a)\)である。
次に1階微分の\(f'(x=a)\)を考えると、
\begin{eqnarray}
f'(x=a)&=&a_1+a_2\cdot2\left(x-a\right)|_{x=a}+a_3\cdot3\left(x-a\right)^2|_{x=a}+\cdots\\
\\
&=&a_1
\end{eqnarray}
よって、\(a_1=f'(a)\)である。
次に2階微分の\(f^{(2)}(x=a)\)を考えると、
\begin{eqnarray}
f^{(2)}(x=a)&=&2a_2+a_3\cdot3\cdot2\left(x-a\right)|_{x=a}+a_4\cdot4\cdot3\left(x-a\right)|_{x=a}+\cdots\\
\\
&=&2a_2
\end{eqnarray}
よって、\(a_2=\frac{1}{2}f”(x)\)である。
更に、3階微分の\(f^{(3)}(x=a)\)を考えると、
\begin{eqnarray}
f^{(3)}(x=a)&=&3\cdot2\cdot a_3+a_4\cdot4\cdot3\cdot2\cdot\left(x-a\right)|_{x=a}+a_5\cdot5\cdot4\cdot3\left(x-a\right)^2|_{x=a}+\cdots\\
\\
&=&3\cdot2a_3
\end{eqnarray}
よって、\(a_3=\frac{1}{3\cdot2}f”'(x)\)である。
これを\(f^{(n)}(x)\)について考えると以下を満たすことが分かる。
\begin{eqnarray}
a_n=\frac{1}{n!}f^{(n)}(x)
\end{eqnarray}
つまり、任意の関数\(f(x)\)は以下のようにかけることが分かる。
\begin{eqnarray}
f(x)&=&f(a)+f^{(1)}(x)|_{x=a}\left(x-a\right)+\frac{1}{2!}f^{(2)}(x)|_{x=a}\left(x-a\right)^2+\frac{1}{3!}f^{(3)}(x)|_{x=a}\left(x-a\right)^3\\
&&+\frac{1}{4!}f^{(4)}(x)|_{x=a}\left(x-a\right)^4+\cdots\\
\\
&=&\sum_{n=0}^\infty\frac{1}{n!}f^{(n)}(x)|_{x=a}\left(x-a\right)^n
\end{eqnarray}
このように任意の関数\(f(x)\)を定数\(a\)を用いてべき乗多項式に展開することをテイラー展開と呼ぶ。
また、この時の定数\(a\)は任意なので特に制限はない。
オイラーの公式
オイラーの公式は以下である。
\begin{eqnarray}
e^{ix}&=&\cos x+i\sin x\\
\\
i&:&虚数単位
\end{eqnarray}
このオイラーの公式は前章のテイラー展開を用いることで求めることができる。
まず、\(\cos \left(x-a\right)\)を定数\(a\)を用いてテイラー展開してみる。
\begin{eqnarray}
\cos \left(x-a\right)&=&\cos0-\sin0\cdot\left(x-a\right)-\frac{1}{2!}\cos0\cdot\left(x-a\right)^2\\
&&+\frac{1}{3!}\sin0\cdot\left(x-a\right)^3+\frac{1}{4!}\cos0\cdot\left(x-a\right)^4-\frac{1}{5!}\sin0\cdot\left(x-a\right)^5\\
&&-\frac{1}{6!}\cos0\cdot\left(x-a\right)^6+\cdots\\
\\
&=&1-\frac{1}{2!}\left(x-a\right)^2+\frac{1}{4!}\left(x-a\right)^4-\frac{1}{6!}\left(x-a\right)^6+\cdots
\end{eqnarray}
次に\(\sin\left(x-a\right)\)をテイラー展開してみる。
\begin{eqnarray}
\sin\left(x-a\right)&=&\sin0+\cos0\left(x-a\right)-\frac{1}{2!}\sin0\cdot\left(x-a\right)^2\\
&&-\frac{1}{3!}\cos0\cdot\left(x-a\right)^3+\frac{1}{4!}\sin0\cdot\left(x-a\right)^4+\cos0\cdot\left(x-a\right)^5\\
&&-\frac{1}{6!}\sin0\cdot\left(x-a\right)^6-\cdots\\
\\
&=&\left(x-a\right)-\frac{1}{3!}\left(x-a\right)^3+\frac{1}{5!}\left(x-a\right)^5-\cdots
\end{eqnarray}
次に\(e^{i\left(x-a\right)}\)をテイラー展開してみる。
\begin{eqnarray}
e^{i\left(x-a\right)}&=&1+ie^{i\left(x-a\right)}|_{x=a}\left(x-a\right)+i^2\frac{1}{2!}e^{i\left(x-a\right)}|_{x=a}\left(x-a\right)^2\\
&&+i^3\frac{1}{3!}e^{i\left(x-a\right)}|_{x=a}\left(x-a\right)^3+i^4\frac{1}{4!}e^{i\left(x-a\right)}|_{x=a}\left(x-a\right)^4\\
&&+i^5\frac{1}{5!}e^{i\left(x-a\right)}|_{x=a}\left(x-a\right)^5+i^6\frac{1}{6!}e^{i\left(x-a\right)}|_{x=a}\left(x-a\right)^6+\cdots\\
\\
&=&1-\frac{1}{2!}\left(x-a\right)^2+\frac{1}{4!}\left(x-a\right)^4-\frac{1}{6!}\left(x-a\right)^6\\
&&i\left[\left(x-a\right)-\frac{1}{3!}\left(x-a\right)^3+\frac{1}{5!}\left(x-a\right)^5-\cdots\right]
\end{eqnarray}
ここで、\(\cos (x-a),\sin (x-a),e^{i(x-a)}\)のテイラー展開を見比べると、\(e^{i(x-a)}\)の実部が\(\cos(x-a)\)であり、虚部が\(\sin(x-a)\)になっていることが分かる。
よって、\(e^{i(x-a)}\)は以下のように表せる。
\begin{eqnarray}
e^{i(x-a)}=\cos\left(x-a\right)+i\sin\left(x-a\right)
\end{eqnarray}
また、定数\(a\)は任意に取ってよかったので、\(a=0\)とすると以下のオイラーの公式になる。
\begin{eqnarray}
e^{ix}=\cos x+i\sin x
\end{eqnarray}
まとめ
本記事では、オイラーの公式について説明し、それに伴ってオイラーの公式の証明に必要なテイラー展開についても説明した。
その内容を以下にまとめる。
- 任意の関数\(f(x)\)は任意の定数\(x=a\)を用いてべき乗多項式に展開することができる。
- \(e^{ix},\cos x,\sin x\)をそれぞれテイラー展開することで、オイラーの公式を求めることができる。
本来、本当はオイラーの公式は高校数学の範囲ではない。
高校生の人には大変申し訳無いと思う。
だが、オイラーの公式は理工系の大学に進学しようとしている人は知っておいて損はない。
三角関数を指数関数でも表せることで異なる視点を持つことができる。
さらに、オイラーの公式を求めるために必要な関数の展開方法であるテイラー展開を理解することも、大学においては重要である。
テイラー展開においては、近似法としてよく用いられる。