数学Ⅲ

面積、体積、曲線の長さを積分を使って求める

積分とは微小な値を足し合わせる計算方法のことである。
以下の記事では微小な面積を足し合わせることに限定して話してきた。

だが、本記事では面積の他に、体積や曲線の長さを積分を用いて計算してみようと思う。
本記事の考え方を理解することができれば、積分の使用範囲が広がり、様々な計算で積分を用いて計算することができるだろう。

積分とは微小な値を足し合わせる

積分とは微小な値を足し合わせる計算方法である。
微小な値を一般的に\(dS\)(微小面積)、\(dV\)(微小体積)、\(ds\)(微小線)などで表す。
本ブログでも以上の表記を用いる。

一般的にある範囲\(C\)での面積\(S\)、体積\(V\)、曲線の長さ\(s\)を積分を用いて表記すると以下になる。
\begin{eqnarray}
S=\int_Cds\\
\\
V=\int_CdV\\
\\
s=\int_Cds
\end{eqnarray}
積分を計算する上で重要なのはこれらの微小な値\(dS,dV,ds\)を求めることである。
これらの微小な値を求めることができれば、後は積分のルールに従って計算すれば良い。

次章以降では具体的な例を用いて微小な値を考えていく。

面積

扇形

まず、図1のように半径\(a\)、内角が\(\alpha\)の扇形の面積を積分を用いて計算する。

この場合は極座標で考えて、極座標表示での微小面積を考える。

まず、任意の点\((r,\theta)\)を\(A\)とする。
次に点\(A\)から\(r\)を微小な値\(dr\)だけ伸ばした点を\(B(r+dr,\theta)\)とする。
次に点\(A\)から\(\theta\)を微小な角度\(d\theta\)だけ回転させた時の円弧の長さは\(rd\theta\)となり、この点を\(C(r,\theta+d\theta)\)とする。
最後に、点\(B\)からも微小な角度\(d\theta\)だけ回転させた後の点を\(D(d+dr,\theta+d\theta)\)とする。

この時、点\(ABCD\)で囲まれた範囲は\(dr,d\theta\)ともに微小であるので四角形とみなすことができる。
すると、四角形\(ABCD\)の面積は\(dS=rdrd\theta\)となる。
この面積\(dS\)が微小面積となり、\(r,\theta\)について足し合わせることで全体の面積を求めることができる。

実際に微小面積\(dS\)を用いて積分をしてみる。
この時、\(r\)は\(0\)から\(a\)までの範囲を取る。
また、\(\theta\)は\(0\)から\(\alpha\)までの範囲を取る。
よって、扇形の面積\(S\)は以下のように表せる。
\begin{eqnarray}
S&=&\int_{r=0}^{a}\int_{\theta=0}^{\alpha}drd\theta\\
\\
&=&\frac{\alpha a^2}{2}
\end{eqnarray}
このように微小面積を与えられた範囲に従って積分をすることで、与えられた範囲の面積を計算することができる。

球体の表面積

次に、球体の表面積を積分を用いて計算してみる。

球体を表す時は3次元座標で表す。
また、極座標表示で表すほうが便利なので(\(r\)が一定のため)極座標表示で表す。

ここで、任意の点を\(A(r,\theta,\phi)\)とする。
次に点\(A\)から\(\theta\)を微小な角度\(d\theta\)だけ\(z\)軸を中心として回転させた時の円弧の長さは\(d\theta r\sin\phi\)であり、この点を\(B(r,\theta+d\theta,\phi)\)とする。
次に点\(A\)から\(\phi\)を微小な角度\(d\phi\)だけ原点を中心に回転させた時の点を\(C(r,\theta,\phi+d\phi)\)として、円弧\(AC\)の長さは\(rd\phi\)である。
最後に、点\(B\)から\(\phi\)を微小な角度\(d\phi\)だけ原点を中心に回転させた時の点を\(D(r,\theta+d\theta,\phi+d\phi)\)とする。

この時、\(d\theta,d\phi\)ともに微小な値であるので、点\(ABCD\)で囲まれた範囲は四角形とみなすことができる。
この四角形\(ABCD\)の面積は\(r^2\sin\phi d\theta d\phi\)となり、この面積が微小面積\(dS\)となる。
この微小面積\(dS\)を球体全体の範囲まで積分すると球体の表面積を計算することができる。
\(\theta\)は\(0\)から\(2\pi\)までの範囲を取る。
\(\phi\)は\(0\)から\(\pi\)までの範囲を取る。
よって、球体の表面積\(S\)を積分して計算すると以下のようになる。
\begin{eqnarray}
S&=&\int_{\theta=0}^{2\pi}d\theta\int_{\phi=0}^{\pi}\sin\phi d\phi r^2\\
\\
&=&r^2\cdot2\pi\cdot\left(1+1\right)\\
\\
&=&4\pi r^2
\end{eqnarray}

体積

本章では積分を用いて体積の計算をする。

壺型

まずは、図のように\(x\)軸の値によって断面積\(S(x)\)が決まる図形において\(x=\alpha\)から\(x=\beta\)までの体積を求める。

任意の\(x\)の時の図形の断面積Aは\(S(x)\)であり、そこから微小の値\(dx\)だけずらした時の断面積\(B\)は\(S(x+dx)\)である。
断面積\(A\)と\(B\)に囲まれた範囲の体積\(dV\)は\(dx\)が微小な値を取るため、\(dV=S(a)dx\)となる。
この\(dV=S(x)dx\)が図形の微小体積になり、\(x\)について積分を行うと図形の体積を求めることができる。
ここでは、\(x=\alpha\)から\(x=\beta\)までの体積を計算するので積分は以下になる。
\begin{eqnarray}
\int_{\alpha}^{\beta}S(x)dx
\end{eqnarray}
つまり、与えられた\(x\)の関数\(S(x)\)について積分をすれば、図形の体積を求めることができる。

球体の体積

球体の体積を積分を用いて計算する。

ここで、先の章において球体の表面積を求めた問題を思い出す。
表面積の問題では、球体の半径\(r\)は一定であった。
しかし、体積を求める時は球体の内部についても計算しなくてはならないので\(r\)は一定ではない。
ここでは、球体の半径を\(r=a\)とする。

また、球体の表面積の微小面積\(dS\)は以下であった。
\begin{eqnarray}
dS=r^2\sin\phi d\theta d\phi
\end{eqnarray}
ここで、体積を求める場合は\(\theta,\phi\)だけでなく\(r\)も変数であるので、微小面積\(dS\)を\(dr\)だけ増やした後の面積\(dS’\)は\(dS’=\left(r+dr\right)^2\sin\phi d\theta d\phi\simeq r^2\sin\phi d\theta d\phi\)となる。
よって、2つの微小面積\(dS,dS’\)に囲まれた範囲の体積\(dV\)は以下になる。
\begin{eqnarray}
dV=r^2\sin\phi dr d\theta d\phi
\end{eqnarray}
この\(dV\)が球体の微小体積になる。
\(\theta,\phi\)の範囲については球体の表面積を求める時の範囲\(0<\theta<2\pi\)、\(0<\phi<\pi\)と等しい。
球体の半径は\(r=a\)なので、球体の体積\(V\)を積分で表すと以下になる。
\begin{eqnarray}
V&=&\int_{0}^{a}r^2dr\int_{0}^{\pi}\sin\phi d\phi\int_{0}^{2\pi}d\theta\\
\\
&=&\frac{4}{3}\pi a^3
\end{eqnarray}

曲線の長さ

最後に、曲線の長さを積分を用いて計算する。

\(xy\)平面上に任意の関数\(f(x)\)がある。
この時、\(x=a\)から\(x=b\)までの関数\(f(x)\)の長さについて考える。

関数\(f(x)\)は全体的には直線であるとは限らないが、微視的に見てみると、ほぼ直線とみなすことができる。
この時の直線の長さを\(ds\)とすると、横軸\(x\)と縦軸\(y\)のそれぞれの微小な値である\(dx,dy\)を用いて以下のように表せる。
\begin{eqnarray}
ds&=&\sqrt{dx^2+dy^2}\\
\\
&=&\sqrt{1+\frac{dy}{dx}^2}dx
\end{eqnarray}
この\(ds\)が曲線の長さの微小線になる。
よって、\(x=a\)から\(x=b\)までの関数\(f(x)\)の長さ\(s\)を積分で表すと以下になる。
\begin{eqnarray}
s=\int_{a}^{b}\sqrt{1+\frac{df(x)}{dx}}dx
\end{eqnarray}
以上の積分に与えられた関数\(f(x)\)の導関数\(\frac{df(x)}{dx}\)を代入することで具体的な曲線の長さを求めることができる。

まとめ