本記事では、三角関数を\(xy\)平面上で考える。
三角関数を用いると\(xy\)平面上の点を\(x,y\)ではなく、原点からの距離\(r\)と原点と点を結んだ線と\(x\)軸がなす角度\(\theta\)で表す極座標表示をすることができる。
また、点を原点を中心に回転させる加法定理についても説明する。
最後に、三角関数の特徴を利用して、三角関数を様々な形で表す和と積の公式についても説明する。
単位円と三角関数
図のように単位円(半径\(1\)の円)上の点\(P(x,y)\)を考える。
この点\(P(x,y)\)を\(x,y\)を用いずに表してみる。
すると、三角関数が必要になる。
ここで、原点\(O\)から点\(P\)までの距離を\(r=1\)として、直線\(OP\)と\(x\)軸がなす角度を\(\theta\)とする。
更に、点\(P\)から\(x\)軸と垂直になるような垂線を下ろして\(x\)軸との交点を点\(H\)とする。
ここで、三角形\(OPH\)の辺に注目すると、以下のことが成り立つ。
\begin{eqnarray}
OH&=&\cos\theta\\
\\
PH&=&\sin\theta
\end{eqnarray}
また、\(OH,PH\)はそれぞれ点\(P\)の\(x\)成分と\(y\)成分である。
よって、点\(P\)の\(x,y\)を三角関数で表すと以下を満たす。
\begin{eqnarray}
x&=&\cos\theta\\
\\
y&=&\sin\theta
\end{eqnarray}
つまり、三角関数\(\cos\theta,\sin\theta\)はそれぞれ単位円上の点\((x,y)\)に相当することが分かる。
また、単位円を拡張して、半径が\(r\)の円\(C\)について考える。
すると、円\(C\)上の点\((x,y)\)は以下のように表せる。
\begin{eqnarray}
x&=&r\cos\theta\\
\\
y&=&r\sin\theta
\end{eqnarray}
\(r,\theta\)はともに任意である。
よって、\(r,\theta\)を用いて\(xy\)平面上の点を全て表すことができる。
このように、\(x,y\)ではなく\(r,\theta\)で表す方法を極座標表示と呼ぶ。
極座標表示は円対称である関数を表す時に便利である。(円や楕円など。)
加法定理
本章では加法定理について説明する。
加法定理とは以下である。
加法定理
\begin{eqnarray}
\cos\left(\alpha\pm\beta\right)&=&\cos\alpha\cos\beta\mp\sin\alpha\sin\beta
\\
\sin\left(\alpha\pm\beta\right)&=&\sin\beta\cos\alpha\pm\sin\alpha\cos\beta
\end{eqnarray}
この加法定理の意味について考える。
前章のように単位円上の点\(P\)を\((x,y)=(\cos\alpha,\sin\alpha)\)と表す。
この点\(P\)を原点\(O\)を中心に角度\(\beta\)だけ回転させた後の点\(Q\)は\((x,y)=(\cos\left(\alpha+\beta\right),\sin\left(\alpha+\beta\right))\)となる。
ここで分かることは、加法定理は原点を中心に回転させる時の前後の\((x,y)\)の関係を表している。
次節では行列を用いて回転の操作を考えて、加法定理の証明をしていく。
証明
平面上の任意の点\((x,y)=(\cos\alpha,\sin\alpha)\)を原点を中心に\(\beta\)だけ回転させる行列を\(A\)とする。
つまり、行列\(A\)は以下の等式を満たす。
\begin{eqnarray}
&&\left(\begin{array}{ccc}
a_{11}&a_{12}\\
a_{12}&a_{22}
\end{array}\right)\left(\begin{array}{c}
\cos\alpha\\
\sin\alpha
\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c}
\cos\left(\alpha+\beta\right)\\
\sin\left(\alpha+\beta\right)
\end{array}\right)\\
\\
&&a_{11}\cos\alpha+a_{12}\sin\alpha=\cos\left(\alpha+\beta\right)\tag{1.1}\\
\\
&&a_{12}\cos\alpha+a_{22}\sin\alpha=\sin\left(\alpha+\beta\right)\tag{1.2}
\end{eqnarray}
ここで、平面上の点は任意なので\(\alpha\)も任意である。
なので、\(\alpha=0\)としても式1.1,1.2は成立する。
よって、\(\alpha=0\)とすると以下になる。
\begin{eqnarray}
a_{11}&=&\cos\beta\\
\\
a_{21}&=&\sin\beta
\end{eqnarray}
また、\(\alpha=\frac{\pi}{2}\)として式1.1,1.2を考えると以下になる。
\begin{eqnarray}
a_{12}&=&\cos\left(\beta+\frac{\pi}{2}\right)\\
\\
&=&-\sin\beta\\
\\
a_{22}&=&\sin\left(\beta+\frac{\pi}{2}\right)\\
\\
&=&\cos\beta
\end{eqnarray}
よって、式1.1,1.2は以下を満たす。
\begin{eqnarray}
\cos\left(\alpha+\beta\right)&=&\cos\beta\cos\alpha-\sin\beta\sin\alpha\\
\\
\sin\left(\alpha+\beta\right)&=&\sin\beta\cos\alpha+\cos\beta\sin\alpha
\end{eqnarray}
また、回転させる角度を\(-\beta\)とすると、以下になる。
\begin{eqnarray}
\cos\left(\alpha-\beta\right)&=&\cos\beta\cos\alpha-\left(-\sin\beta\right)\sin\alpha\\
\\
&=&\cos\beta\cos\alpha+\sin\beta\sin\alpha\\
\\
\sin\left(\alpha-\beta\right)&=&\left(-\sin\beta\right)\cos\alpha+\cos\beta\sin\alpha\\
\\
&=&\cos\beta\sin\alpha-\sin\beta\cos\alpha
\end{eqnarray}
よって、まとめて\(\pm\beta\)だけ回転させたと考えると以下になる。
\begin{eqnarray}
\cos\left(\alpha\pm\beta\right)&=&\cos\alpha\cos\beta\mp\sin\alpha\sin\beta
\\
\sin\left(\alpha\pm\beta\right)&=&\sin\beta\cos\alpha\pm\sin\alpha\cos\beta
\end{eqnarray}
このように、原点を中心として回転させる操作を行列を用いて考えることで加法定理を証明することができる。
三角関数の和と積の公式
本章では加法定理などの三角関数の特徴を用いて、三角関数の形を変える方法について説明する。
和の公式
前章での加法定理について、\(\alpha=\beta=\theta\)とする。
すると、\(\sin\)の加法定理は以下を満たす。
\begin{eqnarray}
\sin2\theta=2\sin\theta\cos\theta
\end{eqnarray}
\(\sin\)と\(\cos\)の積は\(\sin\)で表すことができる。
これを和の公式と呼ぶ。
積の公式
次に\(\cos\)の加法定理を考えると以下を満たす。
\begin{eqnarray}
\cos2\theta&=&\cos^2\theta-\sin^2\theta\\
\\
&=& \left\{\begin{array}{l}1-2\sin^2\theta \\2\cos^2\theta-1 \end{array} \right.
\end{eqnarray}
このように\(\sin\)と\(\cos\)の和を\(\cos\)で表すことができる。
これを積の公式と呼ぶ。
また、\(\cos^2\theta,\sin^2\theta\)は以下のように表せる。
\begin{eqnarray}
\sin^2\theta&=&\frac{1-\cos2\theta}{2}\\
\\
\cos^2\theta&=&\frac{1+\cos2\theta}{2}
\end{eqnarray}
このように\(\sin,\cos\)の字数を下げる操作を字数下げと呼ぶ。
まとめ
本記事では、\(xy\)平面上の点\((x,y)\)を三角関数で表す事から、加法定理の証明や和と積の公式について説明した。
その内容を以下にまとめる。
- 円を考えることで\(xy\)平面上の点\((x,y)\)を以下のように表すことができる。
\begin{eqnarray}
x&=&r\cos\theta\\
\\
y&=&r\sin\theta
\end{eqnarray} - 原点を中心とした回転を行列で表し、回転前後の\((x,y)\)を考えると、加法定理を導くことができる。
\begin{eqnarray}
\cos\left(\alpha\pm\beta\right)&=&\cos\alpha\cos\beta\mp\sin\alpha\sin\beta
\\
\sin\left(\alpha\pm\beta\right)&=&\sin\beta\cos\alpha\pm\sin\alpha\cos\beta
\end{eqnarray} - 三角関数の特徴から、三角関数の形を変えることができる。
\begin{eqnarray}
\sin2\theta&=&2\sin\theta\cos\theta\\
\\
\cos2\theta&=&\cos^2\theta-\sin^2\theta\\
\\
&=& \left\{\begin{array}{l}1-2\sin^2\theta \\2\cos^2\theta-1 \end{array} \right.
\end{eqnarray}
三角関数は極座標表示をする上で欠かせない関数である。
特に、円対称である関数や物理学の系であると、極座標で考えた方が理解しやすい。
三角関数をマスターして極座標表示に慣れてほしい。