ベクトル

ベクトルの説明 大きさと方向を表すベクトル

本記事では、ベクトルについて説明する。
ベクトルとは大きさと方向を持つ数である。
今までは、大きさだけを持つスカラー量を扱ってきたが、ベクトルという考え方を導入することで座標や関数を表したりして計算の幅が広がる。
また、ベクトルを計算する上で重要なことが内積である。

ベクトルは物理学を考える上では欠かせないものになるので理解してほしい。

ベクトルとは

ベクトルとはなにかということについて説明する。

ベクトルとは大きさと方向を持つ数である。
図のように点A,Bがあるとする。
ここで、点Aから点Bに向かって矢印を用いて繋いだとする。
この時の矢印をベクトルと呼び、ABと表す。
また、点Aを始点、点Bを終点と呼ぶ。

ここで注目してほしいことは、ベクトルは始点と終点のみで決まるということである。
始点Aからどのような経路を取っても終点がBなのであれば、どんなベクトルでもABである。
ベクトルABの大きさは点Aと点Bの最短距離であり、方向は点Aから点Bに向かって直線で結んだ時の矢印の方向になる。

今までは、大きさだけを持つ数、スカラー量だけを扱ってきた。
以下にベクトル量とスカラー量の違いを記す。
a=(axay)ax,ay

ベクトルを用いた座標表示

本章ではベクトルを用いて2次元(もしくは3次元)の座標を表す方法について説明する。

図のようにxy平面上に点A(ax,ay)がある。
この時、原点Oを始点、点Aを終点とするとベクトルOAは以下のように表せる。
OA=(axay)

では、ベクトルの持つ特徴である大きさと方向について考える。
方向については、x軸とベクトルOAとのなす角度をθとすれば、角度θがベクトルOAの方向を決めることになる。
大きさについては、原点Oと点Aの距離を求めることであり、点Aの成分であるax,ayを三平方の定理を用いると以下のように表せる。
|OA|=ax2+ay2
このように、xy平面上の点をベクトルで表すことができ、ベクトルの特徴である大きさと方向についてもベクトルの成分を用いて表すことができる。

ベクトルの足し算、引き算

ベクトルの足し算と引き算について説明する。

足し算

図のように点O,A,Bがある。
ここで、ベクトルOBは始点がOであり、終点がBであればどのような経路を取っても構わないことは前述した通りである。
よって、点Oから点Aを経由してから点Bに向かったベクトルもOBである。
つまり、点Oから点Aに向かうベクトルをOAとして、点Aから点BまでのベクトルをABとすると、以下のように表すことができる。
OB=OA+AB
このようにベクトルの足し算を表すことができる。

引き算

負のベクトルについて考える。

図のようにベクトルABのマイナスはABとなる。
ここで、ABABの大きさそのままで、方向が180度逆方向を向いているベクトルである。
つまり、AB=ABとなる。
よって、以下のことが成立する。
OB=OA+AB=OAAB
このようにベクトルの引き算を表すことができる。

ベクトルの成分毎の足し算と引き算と掛け算

まず、最初にベクトルの定数倍を説明する。
ベクトルa=(axay)の定数倍cは以下になる。
ca=(caxcay)

次にベクトルの足し算と引き算について説明する。
xy平面上の2つのベクトルa=(axay),b=(bxby)の足し算と引き算について考える。
ここで、2つのベクトルx^=(10),y^=(01)を用いてa,bを表すと以下になる。
a=axx^+ayy^b=bxx^+byy^
これは、ax方向にaxだけ進んだ後に、y方向にayだけ進んだベクトルということを表している。
ベクトルbについても同様である。
よって、a+bx成分とy成分に分けて計算をすると以下になる。
a+b=(ax+bx)x^+(ay+by)y^=(ax+bxay+by)
つまり、2つのベクトルの足し算は、成分毎の足し算になる。
また、abについても同様である。
よって、まとめると以下になる。
a±b=(ax±bx)x^+(ay±by)y^=(ax±bxay±by)

x^,y^についてxy平面上のベクトルはx^,y^のそれぞれの定数倍の和で表すことができる。
また、x^,y^の大きさは1である。
このようなx^,y^のベクトルのことを基底ベクトルと呼ぶ。
基底ベクトルを用いるとどんなxy平面上のベクトルでも表すことができる。

内積

本章ではベクトルの内積について説明する。

ab=|a||b|cosθ

図のように2つのベクトルa,bがあり、2つのベクトルのなす角度をθとする。
この時、2つのベクトルの内積は以下になる。
(1.1)ab=|a||b|cosθ
ベクトルの内積について考える。

1.1式の右辺の|b|を左辺に移項すると以下になる。
ab|b|=|a|cosθ
ここで、|a|cosθaが持つb方向の成分を表していることが分かる。
特に、|b|=1の時、
ab=|a|cosθ
となり、内積がaが持つb方向の成分になる。

以上のようにベクトルの内積は1つのベクトルaが持つもう一方のベクトルbの成分の大きさに比例したベクトルである。
またbの大きさが1の時は、内積ab自体が1つのベクトルaが持つもう一方のベクトルbの成分の大きさを表す。
特にθ=π2の時の内積は0である。
つまり、あるベクトルはもう一方のベクトルの方向成分を持っていないことを示している。
また、ベクトルの内積はベクトルの成分を表しているので、スカラー量であることも分かる。

以下のxy平面上のベクトルrがある。
r=(xy)=xx^+yy^
rx成分のみを抜き出そうとしたい時、x方向であり、かつ大きさが1のベクトル、つまりx^rの内積を計算すれば良い。
x^rの内積は以下になる。
x^r=xx^x^=1+yx^y^=0=x
基本的に基底ベクトル(x^,y^)は大きさが1であるので、任意のベクトルと基底ベクトルとの内積を計算すると、任意のベクトルが持つ基底ベクトルの成分を調べることができる。

ab=aybx+axby

本節では座標系のベクトルの成分を用いてベクトルの内積を計算する。

図のように2つのベクトルがあり、それぞれの成分と内積は以下である。
a=(axay)b=(bxby)ab=|a||b|cosθ
また、x軸とabとのなす角度がそれぞれθa,θbである時、極座標で表すと以下になる。
a=|a|(cosθasinθa)b=|b|(cosθbsinθb)
ここで、a,bを原点を中心にしてθbだけ回転させる。
すると、a,bx成分、y成分は変わるが、大きさと相対的な方向は変わらないため内積は変化しない。
θbだけ回転させた後のベクトルをそれぞれa,bとした時の成分は以下になる。
a=(axay)=|a|(cos(θaθb)sin(θaθb))b=(bxby)=|b|(10)
ここで図を見ると、cosθ=ax|a|となっていることが分かる。
axを極座標表示するとax=|a|cos(θaθb)である。
これを加法定理を用いて計算すると以下になる。
ax=cosθacosθb+sinθasinθb=ax|a|bx|b|+ay|a|by|b|
よって、cosθ=cos(θaθb)なので、abは以下になる。
ab=|a||b|(ax|a|bx|b|+ay|a|by|b|)=axbx+ayby
よって、2つのベクトルの内積は成分同士の積の和とも表せる。

関数のベクトル表示

1次元の直線

最初に二次元平面上の直線l:y=ax+bをベクトルを用いて表す。

まず、図のように原点Oから直線l上までのベクトルをpとする。
ベクトルpを直線l上の任意のx成分x0を用いて表すと以下になる。
p=(x0ax0+b)=x0(1a)+(0b)
次に、直線lに平行なベクトルをqとする。
直線lとベクトルqが平行であるということは、ベクトルqx成分とy成分の比が直線lの傾きと等しいということである。
よって、qは以下になる。
q=(1a)
ここで、pqの定数倍の和を考えると、図より常に常に直線l上にあることが分かる。
qの定数倍をtとすると、tを任意に取ることで直線l上の座標を全て表すことができる。
つまり、直線lを表すベクトルをlとすると、以下のように表せる。
l=p+tq=(x0+t)(1a)+(0b)=t(1a)+(0b)
注意してほしいことは、x0,tは共に任意の定数なので、それらの和であるx0+tも任意の定数である。
よって、x0+tを新たな定数tとした。

ここで、注目してほしいことは、変数tだけで直線上の座標を決めることができるという点である。
言い換えると、直線という一次元を表す場合は変数が一つだけ必要であるということである。

2次元の平面

次に、三次元内での平面S:z=ax+by+cをベクトルを用いて表す。

まず、図のように原点Oから平面S上の任意の点までのベクトルをrとする。
ここで、ベクトルrは任意のx成分x0と任意のy成分y0を用いて以下のように表せる。
r=(x0y0ax0+by0+c)=x0(10a)+y0(01b)+(00c)
次に、平面Sに平行であり、かつ異なる任意の2つのベクトルp,qを考える。
ここで、平面Sの方程式z=ax+by+cを見てみる。
すると、zxに対してaの比率で増加していることが分かる。
また、zyに対してbの比率で増加していることも分かる。
つまり、zxに対して比率aで増加しているベクトルとzyに対して比率bで増加しているベクトルは平面Sに平行であることが分かる。
よって、ベクトルp,qは以下のように表せる。
p=(10a)q=(01b)
ここで、rp,qのそれぞれの定数倍の和を考える。
すると、常に平面S上の座標を表すことが分かる。
pの定数倍をtqの定数倍をsとすると、平面上の座標を表すベクトルSは以下のように表せる。
S=r+tp+sq=(x0+t)(10a)+(y0+s)(01s)+(00c)=t(10a)+s(01s)+(00c)
ここで、x0,t,y0,sは任意の定数なので、それらの和も任意の定数である。
よって、x0+tを新たな任意の定数tとして、y0+sを新たな任意の定数sとした。

注目してほしいことは、平面上のベクトルを表すために変数t,sを必要とした。
言い換えれば、二次元を表すためには変数が二つだけ必要になった。

前節の一次元を表すために変数を一つだけ必要としたように、一般的にn次元を表すためには変数はn個だけ必要とする。

まとめ

本記事ではベクトルについて説明した。
その内容を以下にまとめる。

  • ベクトルとは大きさと方向を持った数である。
  • 座標系では、ベクトルを成分を用いて表すことができる。
  • ベクトルの内積は片方のベクトルが持つもう片方のベクトル(大きさ1)の成分の大きさを表し、以下の二通りの方法で計算できる。
    ab=|a||b|cosθab=aybx+axby
  • 任意の関数をベクトルを用いて表す時は、それぞれの関数の次元数だけ、変数の個数も必要とする。

今までは数の大きさを考えるスカラー量だけを扱ってきたが、大きさに加えて方向を持つベクトルはスカラー量よりも多くの情報を持っている。
特に、物理学では大きさだけでなく、どの方向に力が加わるか等を考えなければならないので、ベクトルの重要性は高まるだろう。

演習問題

問1

以下のベクトルがある。
n=(nxnynz)|n|=1
このベクトルnに垂直であり、かつ点(x1,y1,z1)を通る平面をベクトル表示せよ。

考える平面に平行であり異なる二つのベクトルp=(pxpypz),q=(qxqyqz)があるとする。
すると、二つのベクトルp,qnは直行しているので、それぞれの内積は0になる。
つまり、以下の等式が成立する。
np=nxpx+nypy+nzpz=0nq=nxqx+nyqy+nzqz=0
以上の等式からpz,qzは以下のように表せる。
pz=nxnzpxnynzpyqz=nxnzqxnynzqy
よって、ベクトルp,qは以下のように書き換えられる。
p=(pxpynxnzpxnynzpy)=pxnz(nz0nx)+pynz(0nzny)q=(qxqynxnzqxnynzqy)=qxnz(nz0nx)+qynz(0nzny)
以上のベクトルp,qのそれぞれの定数倍t,sの和はnに垂直な平面の傾きを表す。
この平面がnの方向に自由に動かせるとすると、平面の傾きを表すベクトルとnの定数倍cの和が平面のベクトルとなる。
つまり、平面上のベクトルをSとすると、以下のように表せる。
S=tp+sq+cn=nz(tpx+sqx)t(nz0nx)+nz(tpy+sqy)s(0nzny)+cn=t(nz0nx)+s(0nzny)+cn
ここで、平面は点(x1,y1,z1)を通ることを思い出す。
すると、x,y,z成分毎の満たす方程式は以下になる。
tnz+cnx=x1snz+cny=y1tnxsny+cnz=z1
この方程式からt,sを消去してcを求めると以下になる。(計算略)
c=nxx1+nyy1+nzz1nx2+ny2+nz2
ここで、分母は|n|2=1である。
また、点(x1,y1,z1)をベクトルを用いてr1=(x1y1z1)と表すと以下のように書き換えられる。
c=nr1
よって、平面上のベクトルSは以下のように表せる。
S=t(nz0nx)+s(0nzny)+(nr1)n
最初の二つのベクトルは平面の傾きを表しており(原点Oを通る平面)、最後のベクトルは平面をn方向にずらすことを表している。
また、nr1の内積はr1が持つn方向の成分を表している。(内積の意味)

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